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@ゆりかごから墓場まで@

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フフフフフ

「夢の大変身」

 目が覚めた
 頭が痛い

 枕が
 木でできていたっ!?

  「そうか! わたし、電車だったんだ!」

 モーターの回る音が
 心臓の鼓動に良く似てて
 停車駅は どこだろう
 ドキドキワクワク 線路は続く

 県境の川に差し掛かかり
 橋を渡る
 河川敷は賑わっている
 サッカーコート
 バーベキュー広場
 校外学習で来た近所の小学生とか
 川の生きものの生態でも調べているのかな

 ドキン!

 まとわりつくような
 熱帯夜の
 湿った空気が
 窓外の雷鳴を震わせている

 明日までには止むだろうか

 カーテンは厚手で
 光を通さない
 起き上がって
 天気を見にいく元気はない

 布団が邪魔だ
 タオルケットは汗を吸い
 全身べちょべちょ

 誰にも触られたくない
 誰も触りたがらない

 枕も邪魔だ
 枕が邪魔だ
 枕は邪魔なのか?

 枕を落とせ
 枕だ落とす
 枕に落とされた

 ドキン!

 ゲシュタルト崩壊した寝具が
 床に散らばる
 ベッドは跡形もない
 わたしは
 どこで眠ればいいのか

  「そうだ! わたし、電車だったんだ!」

 脱線して 落っこちた
 深い眠りの奥底の夢の旅
 どこまでも続く 線路を裏切って
               飛び込んだ
               川へ落ちる

 たぶん、みんなびっくりしたね
 めったにないことだもの

 沈んでいく 息が苦しい
 このまま死んでしまうのかな

 大丈夫だ
 どこも怪我はしていない

 身体が流されているけれど
 どこに漂着するだろう

 モーター音は止まらない
 心臓の音によく似てる?
 違う!
 これは 心臓の音!

  「そうだ! わたし、お魚だったんだ!」

 えら呼吸しています
 人間やめたい!

 近所の小学生の皆さま
 川の仲間に入れて!
 観察シートに書きこんで!

 川の流れにあらがって
 水底の石に腹を叩きつけて
 泳げ泳げ 川を遡れ
 そしていつか足が生える日を夢見て

  「そうだ! わたし、カエルだったんだ!」

 なんでもいいや
 人間やめたい!

 川をぴょこんと飛び出して
 日差しの暖かさに干からびない
 丈夫な皮膚を持って
 ふかふかな羽毛を生やして
 そして 
 いつか
 ついに
 やっと
 鳥になるんだ

 空を飛ぼう!

 ドクン ドクン ・・・・

 目が覚めたら
 頭が痛かった
 おなかも痛かった
 床に寝具と一緒に散らばっていた

 私は
 なんとか起き上がった

 空っぽのベッドの上で
 羽毛の詰まった枕が
 何食わぬ のっぺらぼうで
 寝そべっているのが腹立たしかった

 こんなに鳥を困らせて
 いったいどうしたいというのだろう?

 枕を低反発ウレタンのものに買い替えよう
 そんな 意味のないやつあたりを
 内心グルグル喚きたてながら
 頭と腹の脈打つ痛みに耐えた

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