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@ゆりかごから墓場まで@

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ジョッシュ君の日記2

●月×日

 「イーゼグリムっていうのは鉄の剣だよ。丈夫でよく切れる。とりわけよく切れるのは“あたま”なんだけれど、既に伝説のアイテムになってしまっているぐらいだから、すっかりなまくらなんだ。でも、すごく丈夫だからね。それで伝説に言い伝わるほど長持ちしてるんだ」

 あぴにょんさんは剣を手に入れてピカピカにするつもりだと言っていた。カッと熱してよく叩けばもっと強くなるし、しっかり研げば切れるようにもなるのだと。けれど、それは伝説の剣と言われてはいるものの、ありふれた鉄の剣でもある。果たして、見つけ出したそれが“イーゼグリム”だと見分けられるのだろうか?
 ぼくは疑っていたので、あぴにょんさんが見つけたという“イーゼグリム”が本当に“イーゼグリム”なのかが訝しくて――ううん。そもそも本当の“イーゼグリム”なんて存在しないんじゃないか? “イーゼグリム”それ自体が嘘なら、ぼくはあぴにょんさんの見つけたものを「イーゼグリムかどうか?」なんて疑う必要はない。

 「あぴにょんさん、だまされてませんか?」

 ぼくが尋ねると、あぴにょんさんは嬉しそうにしている。

 「ジョッシュ君は、だまされていない?」

 あぴにょんさんが何かを仕掛けてきている。何だかそういう気配はあったけれど、ぼくはそれを上手く察することができないから、あぴにょんさんの言いなりになるしかない。それでも、ぼくは確信を持って

 「だまされていない」

と答えてみる。ぼくはぼくの考えていることを疑いだしたら、たぶん、いてもたってもいられなくなる。

 「ぼくはあぴにょんさんのことを信じていますから、まさか、今までの会話の中であぴにょんさんがぼくのことをだまそうなんてするはずがない、と思っています。だから、ぼくはイーゼグリムは本当はないと思っていますよ!」

 ぼくはあぴにょんさんに頭の半分をのっとられるのが、いつ、どの瞬間に起るかわからないし、ぼくの考えのどこまでがぼくの考えなのかは分からない。

 「イーゼグリムはあるよ」

 とあぴにょんさんは言う。

 「それは“あたま”が切れる。カッと熱してよく叩けば丈夫になるし、研げば切れるようにもなる。わたしはイーゼグリムがなければ“あたま”が切れない。わたしは“あたま”を切ろうとしていて、それが入用なんだ。だから、イーゼグリムはあるんだよ」

――やっぱりおかしい。

 「あぴにょんさんの都合でどうにでもなるイーゼグリムっていうのは……」
 「ああ、わたしが作ったんだ。でも、どこかになくしてしまった」
 「伝説の武器ですからね」
 「そうなんだ。困った話だね」

 あぴにょんさんはたまにそういうアイテムを作り出すのに余念が無くて、すごく忙しそうにしている。もちろん、一体何の役に立つものなのかは分からない。そもそも、どうしてあぴにょんさんは“あたま”を切りたいのだろう?

 「……そんな物騒な武器は手元になくてよかったですよ」
 「物騒じゃないよ。なまくらなんだから」
 「でも、手を加えて復活するなら、存在自体が危険なアイテムですよ」
 「だいじょうぶだよ。現にちっとも危険はないんだから」
 「誰かが先に見つけて鍛えなおしてしまったらどうするんですか?」
 「そうならないために一刻も早くみつけてしまわなきゃね」

 あぴにょんさんはイーゼグリムを探す旅に出ると言った。

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