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@ゆりかごから墓場まで@

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流せばいい話

私は他人の主観で自分のことをどうこう評価されるのが嫌いなので、「痩せたねー」「雰囲気落ち着いたねー」「進化したねー」みたいなたぶん善意と褒め言葉のつもりで言っているであろう《過去と比べて改善されましたね系》のごあいさつは余計なお世話だと思う。「今まではあなたのお眼鏡にかなわず申し訳ございませんでした」とへそ曲げたくなるんだけれど。ようするに、それしか振る話題がないってことでしょうね。そういうつまらない人間だということは肝に銘じておこうと思った。

なぜ痩せたのか、なぜ雰囲気が落ち着いたのか、なぜ進化したのか。久しぶりに会った人間から言われるならば、そこへ至る過程を類推させるような話題を選んで返答すればよい。

しかし、そうじゃない日頃よく話すような人から言われる場合はどうすればいいのだろう。漫画とかで主人公を近くで見守る立場のキャラクターが唐突に投げかける言葉にもありがちと思うけれど。これは読者に主人公が成長しているということを確認するために言わせている台詞で、読者の読み方(理解)を制御するためのものだ。もしかすると読者はこれまでの文脈が強くなる過程として描いたものとは理解しておらず、主人公は相変わらずいつも通りに強いなぁとか思ってるかもしれないので、「相変わらず強いんじゃない。これまでの積み重ねによってどんどん強くなっているんだ!」と物語が表現していることを説明している。

わざわざ言葉で説明しないと理解させられない作者の表現力不足とかではなくて、言葉で説明しないと好き勝手に解釈できてしまう表現手法ゆえに読者にわかりやすく伝えるための言葉だ。

そういう言葉を受けて、たいていの主人公は「へへへ、そっかなぁ?」と自身の成長を確認して喜ぶようなやり取りで和やかにやりすごすが、あれは茶番だ。成長したということを伝えたい文脈において「うるさい! 俺様はいつもどおりやっただけだ……黙れど素人が! 死ねぇーーー!」とか言って仲間キャラクター同士での紛争が起きてしまい本来目的にしていた悪魔怪人との最終決着のことは忘却の彼方へ。仲直りをさせなければならない……みたいなことになったら話の流れが止まってしまう。そういう展開をさせることで悪魔怪人との決戦をより盛り上げるつもりがないのならテンポよく悪魔怪人との決戦に向かわせるべきだ。だから、用件が済むように余計なことはせずに流すのである。

日常会話で日頃やり取りしている相手から突然言われたときどうしたらいいのかがわからないし、どういう気分になればいいのかも分からない。「髪の毛切ったねー」みたいな急激な変化なら茶番の準備もあるけれど。

一体どうして一区切りつけて解説的に成長あるいは変化を確認せねばならないのだろう。私がいないところで話を作るための情報収集だろうか。でも、私はいつもどおりの一杯一杯で動いてるだけで自覚ないから自分でもわからないことは説明のしようがない。ますますの発展にご期待ください、とか宣言するのも今までの自分を不本意に矮小化するようで気持ち悪い。(相手が縦のつながりで言ったら目上の人なら空気読むけど、横のつながりの相手に対して卑下する気持ちにはなれない)

こんなクドクド書かないでも《過去と比べて改善されましたね系》の褒め言葉は私にとっては言われてうれしいことではない、ってだけの話だけれど。


……うん。
つまらない人間なりに一生懸命生きよう。

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